「きゃあっ!?」
甲高い、短い悲鳴が響いた。フェイトはあわてて声のした方を振り返る。
舗装なんて単語は存在するはずもない無人の惑星、ストリーム。元からそんな状態だったのに、アンインストーラーの影響なのか崩壊してしまった今では、普通に歩くのにも足を取られる。
今も不安定な瓦礫に乗った結果転びかけているソフィア。多分尻餅を付くだけだとは思ったが、振り向いた勢いのまま彼女に駆け寄って、ぐいと腕をひっぱって助け上げた。

―― Hier waltet Friede.

「……ありがとう、フェイト。びっくりしたぁ。……ごめんね?」
ほっと胸をなでおろし、小首を傾げて見上げてくる様が小動物を思わせる。
「こんなのどうってことないけど。気を付けろよ? そこかしこ瓦礫だらけなんだから」
「うん。転んだら服がホコリで真っ白になっちゃうもんね。痛いし」
彼女らしい、どこかずれた答えにフェイトは小さく笑った。笑われたことに頬を膨らませかけて、ソフィアはふと気が付いたように、あ、と声を漏らす。
「……あの、フェイト? アルベルさん一人で放っておいて大丈夫……じゃなさそうなんだけど。ほら、執行者に……」
「……あ」
フェイトの右手には抜き身の剣。ソフィアを助ける時に、下敷きになることやら抱きとめることやらを選ばなかった理由はそこにある。

なにしろ、今は戦闘中。
いきなり前線から離脱したフェイトに対し、ひとりで複数の敵を相手にすることになったアルベルはもちろん何かを言ったはずだが、ソフィアのことで頭がいっぱいになっていたフェイトにはそんなもの聞こえていなかった。その後ものほほんと会話をくり広げている間、幾度となく上がったはずの悲鳴も断末魔の声も、まったく耳に届いていなかった。

◇◆◇◆◇◆

ぼろくずのようになって地に横たわる男に興味をなくしたか、執行者がゆらりとフェイトたちに近付いてくる。最近はいくらか慣れてきたものの、やはり怯えるソフィアにいつものさわやかな笑みを向けるフェイト。
「大丈夫だよ、僕がお前を守るから」
「フェイト……」
「蘇生の術でアルベル生き返らせてくれ。……じゃあ、ソフィア、行ってくる」
「うん。気を付けてね」
まるで新婚のような会話に頬を染めてうなずくソフィア。ちょっとここでは血生臭いが。
……この位置で蘇生すれば、その瞬間にまたボコられること必至のアルベルは二人ともどうでもいいらしい。

青年が剣をかまえ執行者に突っ込んで行き、少女が精神を集中して呪文を唱えはじめた。

カンベンしてくれよ、とは仲間たち共通の悲痛な叫びなのだが。しかし二人は止まらない。
今日もどこかで(主に仲間たちの)悲鳴が上がる。

―― End ――
2004/02/01執筆 2004/05/29UP
フェイト×ソフィア
OFP
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Hier waltet Friede.
[最終修正 - 2024/06/25-10:12]