守るべきメンバーたちに、今は頼るしかなくて。
今の自分は、ただ守られるしかできない無力な存在で。
敵が、なにやら呪文を唱えはじめた。倒すつもりよりも止めるつもりが六割、邪魔をすることができれば上々とくり出したこぶしが、
光が凝った瞬間の、その敵に。
きっと理由の大部分が運でしかない、それでもとりあえず――届いた。
敵、体重の軽いラヴィッチが声もなく吹っ飛んで、
けれど彼女の放つ直前だった光が、こぶしに変にはじける。
「……で、これか」
「他に原因思いつかねえ」
「あるかもしれないじゃないか。……日ごろの行いが悪いとか」
「だったらもっと覿面な神罰くだると思うぜ」
あはははは、男性陣のむなしい笑い声が上がった。乾いた声はすぐに途切れて、おのおのそらしていた視線をいやいや目の前に戻す。
そこにいたのは、クリフ。――のはずだ。
金髪に青い瞳、整った顔。いつもというかいつもというほどいつでもではないもののよく浮かべているシニカルな笑みが、けれど今は似合っていない。
外見年齢五、六歳の少年には、そんな笑みは似合わない。
「……若返ったんだろ、喜んどいたらどうだよ」
「バカ言え、十年十五年ならともかく、この年齢じゃあ単なるガキだろうが。腕力も体力もまるでないこの状態の、どこに喜んだらいいんだよ」
「少なくとも腰痛の苦しみからは逃げられたよな」
「はっはっは、――オレは腰痛持ちじゃねえ」
主にかまっているのはパーティリーダー、漆黒団長は興味がないとでもいいたそうに回復アイテムをもてあそんでいる。アイテムで怪我を癒すべきか、それとも術を使うことの出来る女性陣が戻るのを待つべきか。
「――ごめん、やっぱり無理だった。探すとなるとなかなか見つからないわね」
「この辺たぶん全部見回ったはずですけど、ほら、今まで絨毯で敵一掃作戦やっていましたから。ラヴィッチどころか他のモンスターもいません」
「あんたがこんなサイズじゃ、さすがに戦わせるのもどうかと思うしね。場所を移動するか、早いけど今日はもうキャンプにするとか」
主に中、遠距離の攻撃手段が主な女性陣は、つまりは体力の消費も少なくて。無傷で勝利するのはさすがに難しくても、大抵の敵なら対応できるからと出ていた。のが、ここ周辺にモンスターはいないと言い切られて、当の本人はがっくり肩を落とす。
同じ敵に同じような攻撃を受けたなら、きっと元に戻れる――まではいかなくても何か起きたならそこから年齢操作の糸口になるのではと。
そうと期待してラヴィッチを探しにいったメンバーたちに。
一縷の望みがばっさり切られて、クリフが大袈裟に落ち込む。
――だって、何しろ、
――今まで彼はパーティメンバーの保護者で。
――たとえ自称にしろ、それを否定できないようには動いてきたばずだし。
――それは自分の役割だと自負していた。
それが。
――守るべきメンバーたちに、今は頼るしかなくて。
――今の自分は、ただ守られるしかできない無力な存在で。
ふくふくした手には武器は似合わない。というか、身体だけがちぢんだため今の彼の格好はなかなかにひどいもので。
戦うことができない、出歩くこともできない。
そんな自分が、ただ悔しくて。
「いっそこのままでもいいじゃないですか」
「ダメだよソフィア、そんなことになったらこいつは、」
「?」
「――身長低いんだよ。危険じゃないか」
「…………フェイトのすけべー!!」
向いた目線で何を言っているのかが分かった栗色の紙の少女が暴れる。うっかり口を滑らせたパーティリーダーがあわてて自分の口元を隠す。
当事者のクリフは、今だ落ち込みから立ち直ることもできなくて。
守りたい者たちから守られる、そんな現状はどうやらしばらく続きそうで。
――守るべきメンバーたちに、今は頼るしかなくて。
――今の自分は、ただ守られるしかできない無力な存在で。
うなだれた彼は珍しく暗い何かを背負っていて。
周囲でくり広げられる、何だかどんどん拡大する大騒ぎには、
まるで気が付かない、そのままで。
