――現実を忘れて、ひとときの夢を。

―― Oberlicht

「イッツショータ~イム☆」
明るい声でその戦闘ははじまった。
褐色の肌の天使がところせましとフィールド上を駆け抜けて、ケープをひるがえして体重のないもののように軽やかに踊る。まだのびきっていない手足とあどけない笑顔は、敵さえも魅了しそうなほど。彼女にしか聞こえない音が、曲が実は流れているのではと思ってしまうくらい、リズミカルに舞い踊る。
血なまぐさい戦場が、彼女が踊ればそこは華やかなステージになる。同じ場所に立っていながら、彼女の周囲だけ他のメンバーときっと世界が違う。

くるくると光が踊る。
褐色の肌の天使が、軽やかに身を翻す。

◇◆◇◆◇◆

――アタシにはダンスしかないから。
いつか彼女が笑った。
――他にできることがあるかもしれないけど、アタシはダンスと出会っちゃったから。
――他はいらない、ただダンスがうまくなりたいって、思っちゃったから。
どこまでもまっすぐに、あるいは遠く未来を見つめる目で。きらきらまっすぐに、あるいは遠く希望だけを目指す目で。笑った。
――世界がなくなっちゃったら、アタシは踊れなくなる。それがイヤで戦ってる。
――マリアちゃんが聞いたら怒っちゃうね、うん、でもアタシはアタシのために戦ってるんだよ。
――アタシはアタシのワガママで、この場にいるんだ。
そう、困ったように笑った。

陽の光、月明かり。星の光さえ、彼女にとってのそれは彼女のためのスポットライト。喜びも悲しみも、すべての感情は踊りが伝えてくれる。踊りですべてを伝えられる。
話すよりも、あるいは息をするよりも。
踊ることは彼女のすべてで。

◇◆◇◆◇◆

くるくると光が踊る。ステージの上からだと光の関係で観客席が見えなくて、それでもたくさんの人の息づかいが聞こえる。たくさんの視線を感じる。
――これだけの人が、他でもないアタシを、アタシの踊りを見に来てくれたんだって、思うと、嬉しい。
いつか、彼女が笑った。
――たとえそうじゃなくても、
――たとえ偶然でもアタシの踊りを見て、元気になってくれたなら嬉しい。
――「きれいだった」って誉められるより、「元気が出た」って笑ってもらえた方が嬉しい。
そう言って、はにかんだように笑った。
言われなくても彼女の踊りは、元気を周囲にふりまいている。くるくると、それは本当に楽しそうにステージ上を回るから、そんな彼女を目で追ってしまう、そして笑ってしまう。

――現実を忘れて、ひとときの夢を。
それがロセッティ一座の掲げる目標なら、まぎれもなく彼女はその一員だ。

◇◆◇◆◇◆

宇宙一の舞姫の名も、サイン一つで惑星を買うことができるだけの名声も。
今は無理でも、きっといつか叶えられる。

くるくると光が踊る、華やかに彼女が笑う。
褐色の肌の天使が、ただただ無心に踊る。

―― End ――
2006/04/16UP
個人
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Oberlicht
[最終修正 - 2024/06/26-15:35]