本当の本当は。
願っていることは、たったひとつなのに。

―― tete de lard

はあ、
もういくつ目かも分からない息を吐き出した。吸い込んだ息全部を吐き出すようなため息に、今日の食事当番、金髪を短く刈り込んだ兄貴分が眺めていたなべからふと振り返るとやれやれと大げさに肩をすくめる。
「……ルーク」
「何だよ分かってるよお前の言いたいことなんて。素直に謝ってこい、とかそんなところだろ。
それができたらこんなところで腐ってなんかねぇっての」
「お前もたいがいガンコだからなー」
「うるせ」
分かっていることを指摘されて、分かっていたけれど彼に改めて言われると腹が立つよりもがっくりする。がっくりするけれどいざ彼女の前に立つと、すまないと思うのに、口が勝手に動くのだ。思っていることとは逆のことを、彼女をさらに怒らせることを言ってしまう。
性分、とかそんなものなのだろうか。けれど。
「……おれだけが悪いんじゃねーよ」
「へぇ、ティアが悪いのか。今回は」
「今回は……っ、そ、そうじゃなくて!
つかおれ言ったっけティアと喧嘩したって」
「いーや、今はじめて聞いた」
「……っ、」
「はじめて聞いたけどな? お前がそーやってうじうじヘコんでるのはだいたいティア相手のときだろ?? ナタリアとかが相手ならヘコむより先にぐちってるって。ああ、アッシュの場合もだな」
「……そんなことねー」
「そうなんだって。……で? ティアが悪いのに自分が折れるのが気に食わないのか。ガキだなーお前やっぱ」
「ちっ! ……ちげーよおれも悪いけどティアも悪いんだ」
「分かった、つまり両方悪いから自分が先に折れたくないんだな。
……おいルーク、大人になれよ。女性相手なら素直に謝っといたほうがずっと話が単純ですむんだって」
「――それ、女嫌いに言われてもなー」
――説得力がないっていうか。
やれやれとぼやけばいつもの反論がきて、聞く気もないので聞き流して立ち上がる。
分かっていた、けれど踏ん切りがつかなくて、それでもこうしてはっきり言ってもらえば多少は勢いが付いた。ような気がする。
「……とりあえずいってくる」
「人の話を……いや、いい。もういいからがんばれよ」
言われて後ろ手にひらひらと手を振る。
分かっていた、どのみちこのまま険悪なままではいたくないのだ。

◇◆◇◆◇◆

はあ、
もういくつ目かも分からない息を吐き出した。吸い込んだ息全部を吐き出すようなため息に、消費アイテムの数を確認していた黒っぽい癖毛の少女がふと顔を上げるとやれやれと大げさに肩をすくめる。
「……ティア」
「わ、分かっているわよアニス。ため息吐くくらいなら素直に謝れば、でしょう?
分かっているけど……難しいのよ」
「ティアって実は相当ガンコだからねー」
「……そっ! そんなことないわ……」
分かっていることを指摘されて、分かっていたけれど改めて言われると腹が立つよりもがっくりする。がっくりするけれどいざ彼の前に立つと、すまないと思うのに、口が勝手に動くのだ。思っていることとは逆のことを、彼をさらにすねさせることを言ってしまう。
性分、とかそんなものなのだろうか。けれど。
「……わたしだけが悪いんじゃないもの……」
「あー、やっぱルークが悪いんだ」
「……っ、そ、そういうわけでもないわ!
……? アニス?? わたし言ったかしらルークと喧嘩したって」
「ううん、今はじめて聞いた」
「……っ、」
「はじめて聞いたけどさ、ティアがそーやってうじうじ悩むのはまずルーク相手でしょ? ルーク以外の相手だと、――実は悩んでいるかもだけど、そんなの外に見せないし」
「……そんなこと、ないわ……」
「そうだよ? ……で? ティアだけが悪いわけじゃないのに自分が折れるのが気に食わないの?? あは、案外ガキっぽいんだー」
「ちっ! ……違うわそんなのじゃないの、」
「分かった、つまりは先に折れたくないんだ。
……ねえティア? 男ってば見た目よりずっとずっとガキっぽいイキモノだよ。意地張ってないで素直に謝ったほうがずっとずっと早いよ?」
「――アニス……どこで仕入れるのそんな知識」
「さてねー」
思わずムキになれば彼女は笑って、明らかに面白がっているのが分かった。それに腹を立てるよりはなんだかいたたまれなくなって、ただ立ち上がる。
分かっていた、けれど踏ん切りがつかなくて、それでも誰かにこうしてはっきり言ってもらえば多少は勢いが付いた。ような気がする。
「……とりあえずいってくるわ」
「うんうん素直でよろしい。がんばってねティア! いざとなれば涙のひとつでもこぼしてみればイチコロだよ?」
「そんなもの、思って便利に出せるものでもないでしょう」
「やっぱ大切なのは日ごろの特訓だね!」
話がかみ合わないことになんだか疲れながら、これではキリがないと歩き出した。
分かっていた、どのみちこのまま険悪なままではいたくないのだ。

◇◆◇◆◇◆

本当の本当は。
願っていることは、たったひとつなのに。
分かっているのにどうにもならなくて、頑固だ石頭だなんて、誰に言われなくてもそんな自分は自分が一番よく分かっている。

向こうから、そして目指す相手がやってくるのが見えて。
止まりかけた足を、けれど何とか踏み出す。

―― End ――
2006/09/23UP
ルーク×ティア
OFP
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tete de lard
[最終修正 - 2024/06/27-09:56]