まっすぐに前を見る姿が。
それしかできない、不器用な生き方が。
今も、目を閉じたなら彼の強い目が思い浮かぶ。まるでにらむように挑むように、いつでもまっすぐ前を見つめていた彼を。空間的にも、そして同時に時間的にも。いつだって「先」を見ていたその目を。
同じ目を持ちたかった、同じ目線で同じものを見たかった。見ていたかった、見続けたかった。どちらが前でも後でも上でも下でもなく、同じ場所で同じものを見たいと思った。願った。
叶うと思ったそれは、信じていた想いは、けれどあの日見失ったけれど。
それでもこうして目を閉じたなら、変わらないあの目を思い浮かべることができるから。
今も、目を閉じたなら彼女のまっすぐな目が思い浮かぶ。まるで貫くように、どこまでも強く前を見つめていた彼女を。視線も思考も苛烈なまでにまっすぐに、民も国も未来もそらすことなく見つめていたその目を。
その目が好きだった、どんな理由であれ曇らせたくはなかった。それを守るためならどんな犠牲を払っても惜しくはなかったし、我が身を投げ捨ててもかまわないと思っていた。それでもできるならすぐそばで、彼女の目をずっとずっと見続けていたいと願った。思った。
叶うと思ったそれは、信じていた想いは、けれどあの日見失ったけれど。
それでもこうして目を閉じたなら、変わらないあの目を思い浮かべることができるから。
再会を果たした後、その存在を生存を成長をこの目で確認してから。今までどんなときにも想っていたのは相手のことで、今までもそうだったけれど、それがいっそう強くなった。すべての行動は突きつめたならただ相手のためで、それがどこまでも誇らしかった。
いつか道を違えても、ただ時おり交錯するしかなくなっても、たとえもう並ぶことがないとしても、あるいは片方が途切れたとしても。
彼を、彼女を哀しませたくはない。次にまみえたときに胸を張っていたい、たとえ離れていても相手に相応しい自分でありたい。かなうなら自分のことを誇らしく思ってもらいたい、――それはたとえば今自分が相手のことをそう想っているように。
そう願ったなら、なすべきは決まっていてそこに迷いはなかった。最短距離でも回り道でも、たどるべき道は他の道と比べてたとえば光っているようでさえあった。
彼の彼女のためを思えば、どんな苦労も苦痛も苦難も何でもなかった。
むしろ、嬉しくさえあった。
たとえようもなく誇らしく、充足感しかなかった。
まっすぐに前を見る姿が。
それしかできない、不器用な生き方が。
好きだった、愛していた。心を占めるそれは気付けば当然のようにそこにあって、きっとずっと変わりもしないし揺らぎもしないのだと、
思うよりも知っていた。分かっていた。
そして。
――目を閉じれば、やはり今も。
――浮かんでくる。どこまでも変わらず、想っている。
――強くまっすぐに、くじけない誇りとともに。
一度は見失った、あなたのその目を。
