お前が悪い、と自分の声で断定されて。
それにほっとした部分だって、確かにあった。

―― rire mauvais

――アクゼリュスを、街ひとつを滅ぼした。
障気の泥の海に沈む子供の姿に、それはもしかしてとルークの中を駆け巡った。いや、超振動を使って――気を失って。目を醒ましたときにそこに広がっていた景色を見た瞬間に、きっとそれは分かっていた。
――自分のせいで街がひとつ消滅したのだと。
――自分のせいでたくさんの人が死んだのだと。
知って、分かって、けれど。けれど分かったとしてもそれを認めたくはなくて、絶対に認めたくはなくて、怖くて怖くて自分でも情けないいいわけを重ねた。

◇◆◇◆◇◆

――だって、確かに人を救おうと思っていたのに。
――英雄になるため、だからだけじゃない、そうだ、人を助けたかったのに。
超振動という力がどうやら自分にはあって、それを使えば障気を中和できると教えられて、もちろん英雄になりたいのも自由になりたいのも確かにあったけれど、それだけではなくて人を助けられるというのはとても嬉しかった。感謝されたい気持ちも、すごいと誉められたい気持ちも確かにあったけれど、そのためだけじゃない、誰かを助けられるなら助けたいと思った。シチ面倒くさい全部をすっ飛ばして一気にそれができるなら、願ったり叶ったりだった。
そのために超振動を発動させたはずだった。いや、師匠の言うとおりにパッセージリングに向けて意識を集中した。ただそれだけだ。

それで、何が起きたって。
本当にそれは自分が悪いのか。自分だけが。

◇◆◇◆◇◆

思う心の裏がわでは、自分は悪くない、自分だけが悪いわけじゃないと思う心の裏がわでは。
けれどあの時師匠の言葉を鵜呑みにしたりしないで、あの時あの場で超振動を発動しなければ、少なくとも街は崩壊しなかったと思う心もある。何とか生き延びて、けれど結局は障気の泥の海に沈んだあの子供は助かっていただろうと思う心もある。
街ひとつ、確かに吹き飛ばしたのは自分だと、このルーク・フォン・ファブレなんだと認める心もあって、自分は悪くないといいはる醜さもちゃんと分かっていて、誰もが冷たい目を向けてくる理由も、怒って、あるいは呆れて離れていく理由も全部分かっていて。
苦しくて。

口から漏れるのは、情けない醜いいいわけと否定の言葉。本当は自分が悪いと思っているのに、どうしても認められない、認めたくない重すぎる事実。仲間だったはずの誰もが彼を見捨ててその場から立ち去って、チーグルの仔だけがその場に残って、こみ上げるのは恐怖といいわけと後悔と吐き気。
意味が分からない、けれど止まらない涙。

だから。
お前が悪い、と自分の声で断定されて。
それにほっとした部分だって、確かにあった。
本当は自分の声ではない、自分の声と同じ声をした別人が言っているだけだとしても、自分が悪いと断定してもらえるのはありがたかった。
心底自分を侮蔑する、嘲笑するその声は、まさに心の奥底でとぐろを巻いていたもので。
容赦なく斬り裂くように断言されるのは、そうだ、つらかったけれど苦痛だけではなかった。

◇◆◇◆◇◆

認めたくないけれど、事実は事実だった。
――自分のせいで街がひとつ消滅したのだと。
――自分のせいでたくさんの人が死んだのだと。

断定してくれた声が、だから心のほんの片隅で嬉しかったことは。ありがたかったことは。

回線がつながっているという、自分の被験者を名乗るこの男に。
ばれずにいられるだろうか。

―― End ――
2006/07/16UP
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rire mauvais
[最終修正 - 2024/06/27-10:24]