懐かしい風景に足が止まっていた。懐かしい、と思ったのはその雰囲気だけで、実際にここへ来たのははじめてだったけれど、そうとわかっていてもやはり懐かしい。
豊かな森。
緑がしげりすぎて薄暗いこともなく、適度に明るくて、けれどやはり緑が濃くて、――かつて一時だけ友人になった、その後敵対してついにはこの手で滅ぼした彼らを思い出す。あの森とよく似ている。今はもうどうなっているかわからない、思い出の中のあのあたたかく明るい、秘密基地のようだった森と。

―― foret de larmes 2

一度止まった足が動かない。疲れているのかもしれない。
あの旅の最後、街に戻ればきっと勇者として盛大に迎えられただろうと知っている。けれどそんな称号にはまるで魅力がなくて、結局逃げるように旅に出た。そのまま足は止まらずに、気がつけば年単位で時間が経っていた。

疲れているのかもしれない。疲れているのだろう。
ぼんやりと天をあおぐ。
濃い緑、降りそそぐ光。はじめて訪れたのに懐かしくてしかたがない風景。
足が動かない、あおいだ緑がふいにかすむ。
なんだろうと思う間もなくほほを生暖かいものが通りすぎて、まるで獣の吠えるような声が間近く聞こえて、――そうしてようやく、自分が泣いていることに気がついた。
豊かな森、濃い緑。そうだ、これは、あの森は、彼女に直結している。いや、目に映るすべては彼女に結びついて、けれど今の今まで気づかないふりをしていた。色を、ぬくもりを見ないふりをして、彼女のことを忘れたふりをして、けれどそんなものただの嘘だった。

◇◆◇◆◇◆

――リドリー、ごめん。

あの旅の終わりに、彼女を殺した。
そうと彼女が望んで、それ以外に方法がなかった。
あったかもしれないけれど、今でもわからない。当時もわからなかった。
――オレがもっと強かったなら、
――オレがもしも賢かったなら、
そうしたらわかったかもしれない、他の方法がわかったかもしれない。けれど弱くて愚かな自分は、やはり今でも最良の方法がわからない。選んだ道が正しかったのかどうか、今でもまったくわからない。

世界なんてどうでもよかった。
誰より彼女を優先したかった。
何よりも大切にしたかった彼女が望んだのは、
彼女自身の、死、だった。

――リドリー、ごめん。
――今まで、お前のことを忘れていたわけじゃなくて、
――でも、今までお前のために泣いてやれなくて、ごめん。

◇◆◇◆◇◆

すべてが今さらだ。
彼女は死んで、自分は遺された。妖精たちは世界を去って、自分は自分の国から逃げた。
そして今さら、何年も経った今になってやっと。
やっと彼女のための涙がこぼれた。

彼女と一緒にいたかった。
彼女と笑い合いたかった。
たったそれだけの願いは、もう永遠に叶わない。

すべては過去の幻想の向こうに消えて、
過去の幸せによく似た森の中で、

――子供のような泣き声が消えない。

―― End ――
2010/01/31UP
ジャック×リドリー・他
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Foret de larmes 1 2
[最終修正 - 2024/06/21-10:18]