護りきることができないならいっそ、
――そんな馬鹿な想いが心にわだかまっていた。

―― Extremismus 2

あの一瞬、血が沸騰した。
そしてゆっくり、身にしみこむように分かったことがある。

たぶん、自分はこの女を自分の特別だと認識してしまったのだ。あるいは自分の身よりも生命よりもずっと重要なものとして、この女を認識してしまった。
だから、怒りというよりも衝動を抱いた。自分にとっての特別な彼女を傷つけようというモンスターに対して。だから防御を棄ててただただモンスターに突っ込んでいった。覚えていないけれどたぶんそんなところだろう、元から防御よりも攻撃する性格の彼だけれど、たぶんその時は本当に捨て身だったはずだ。

ネルの、まるで機関銃のような非難の声は止まらない、けれど相変わらずその声はアルベルに響かない。

◇◆◇◆◇◆

愛だとか恋だとか、そんなお綺麗な言葉ではなくて。
ただただどこまでも醜い独占欲に、そんな心を自分が抱いている事実に。いっそ身がすくんで、何も聞こえない。

――ただ許せなかっただけだ。
自分ではない、自分以外の何かが。自分にとっての特別な存在を傷つけようとしたから。
逆をいうなら。それはきっと、彼自身がネルを傷つけることにはそんなに衝撃を受けないということになりはしないか。

そうだとしたらそれは、吐き気すら呼ぶ醜い独占欲だ。いつか彼自身の手でネルをあやめる、その布石になるかもしれない、それを思えばただただどこまでも自分が許せない。
あるいは、この地に倒れ伏す今では単なる肉塊と化したこのモンスターよりも、何より自分が許せない。

◇◆◇◆◇◆

すべてが護れたらいい、
――そんな馬鹿な夢を見た。
護りきることができないならいっそ、
――そんな馬鹿な想いが心にわだかまっていた。

「……聞いてないね!?」
「単なる文句なぞなんで俺が聞かなきゃならねえ」
「あんたがそんな性格してるからだよ!!」
どこをどう間違えたのか、回復の術を覚えそこなったネルの顔がさらに怒りで赤くなる。仲間たちから借り受けたアイテム袋をごそごそやっていた手で、怒り顔のまま回復アイテムを突きつけてくる。
――そのころになってようやく。
血まみれの自分と、そんな血まみれの彼に膝を貸しているネルに気が付いて。極寒の地にあれば、当初は生温かかったモンスターの返り血もすっかり冷え切って凍りつきかけていて、そんなものを身体にくっつけているアルベルはもちろん寒いし、そんな彼に密着しているネルも当然寒いはずで。
「……阿呆なことするな」
「ほっときゃあんた、ノンストップで凍死しそうだったんだから仕方ないじゃないか!!」
ぼそりとつぶやいたなら、きっと瞬時に意味が分かっていっそ悲鳴じみた声が上がる。

◇◆◇◆◇◆

――ああ、それでも。
――いくら気付いても、もう彼は彼女から離れられない。
ぷりぷり怒ったまま次のアイテムをあさるネルを見るとはなしに、ただ見ている彼の脳裏にあきらめきった彼自身の声が聞こえた。
――離れられない、離れればたぶん俺は正気を失う。
――今でさえ十分狂っている俺が、さらに狂気に足を進める。
――この女を殺したくなくて、けれど狂った結果傷つけたくもないのなら、

出た答えは不吉なもので、だからアルベルは首を振ってそれを追い出した。
――動けるようなら行くよ、まずはあんたの格好と、あとはアーリグリフ王に報告に行くんだろう?
――ぼやぼやしてたら本当に凍りつきそうだね。
そんなことを言ったネルが、そしていきなり笑って、
「……ありがとうね? ま、あんたのおかげで助かったよ」

血なまぐさい予想は、たぶんその笑顔に霧散していく。
だから彼は、ただ口の端を持ち上げた。

―― End ――
2006/12/20UP
アルベル×ネル
OFP
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Extremismus 1 2
[最終修正 - 2024/06/21-11:19]