いつからか、この心の中に。
自分でもよく分からない何かが棲み付いて、ときおり心を締め上げる。

―― 鶏心 [きゅん]

「フローリアン、どしたの? おなか痛い??」
「痛くないよ、なんで? アニス」
「難しい顔してるから、珍しいなって」
――ほらここ、しわが寄ってる。
――アッシュみたいだね。……あ、フローリアンはアッシュ知ってたっけ?

笑顔のアニスが手を持ち上げて、つい、と彼の眉間をつついた。びっくりして顔を跳ね上げた彼に、あはは、と笑う。
――ああ、まただ。
彼女の笑顔に、フローリアンの胸の奥が締め付けられるように痛む。
きゅうきゅう痛むのに、けれど。
……けれどその痛みはどこか甘くて。
……もっともっと味わいたいような、それはどうにも逃げ出したいような。

◇◆◇◆◇◆

――アニスが、大好きだ。
フローリアンはアニスが好きで、たぶん最初にアブソーブゲートで彼女と逢ってから、その背にかばわれた瞬間から。
本当に本当に大好きで。

好き、は変わらないのに。
ここ最近、アニスを思うとフローリアンの心がきゅうと小さな音を立てる。

アニスの笑顔が好きで、
けれどなんだか、最近はその笑顔がまっすぐに見られなくて。
心にいつか棲み付いた何かが、何より大好きなアニスの笑みを、まっすぐに見つめるのを邪魔をする。

◇◆◇◆◇◆

「……アニスが好きだよ」
「うん、あたしもフローリアンが好きだよ? どしたん?? いまさら」
「ほんとに大好きだよ??」
「知ってるよー。フローリアンはあたしにぞっこんだよね」
あはははは、大口を開けて笑うアニス。ますますきゅうと音を立てるこの心。
なんだかたまらなくなってぎゅうっと細い身体を抱きしめたなら、一瞬硬直して、けれどふっと息が降ってきたと思ったら。
やわらかく抱きしめ返されて。

「ほんとになんだろね? 変なものでも食べた??」
「食べてない、おなか別に痛くない」
「そ? ……じゃあますますなんだろねー」
くすくすくす、笑う彼女が心地良い。触れ合えばほら、こんなにも心落ち着く、心地良い。
――けれどそれと同じくらいに、
むねが、きゅうっとする。

痛くて、けれど甘くて。
どうしたらいいのかまるで分からなくて。

◇◆◇◆◇◆

「……ずっと一緒にいてね?」
「フローリアンがいやだっても、あたしはたぶんずーっとフローリアンから離れられないよ」
いつからか、この心の中に。
自分でもよく分からない何かが棲み付いて、ときおり心を締め上げる。
それは痛くて、それは甘くて。

――ああ、ますます彼女が大好きで、
――ああ、ますます痛い、ますます甘い。

はなれたいけれどはなれるなんて。
絶対に考えられない。

―― End ――
2006/10/28UP
きゅん / 罠かもしれない6題_toaフローリアン×アニス_
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鶏心 [きゅん]
[最終修正 - 2024/06/14-16:45]